産後うつとマタニティーブルーの違いと対処法
出産後に、気分が落ち込んだりイライラして悩んでいませんか?一時的に気分が優れないというだけなら、気にする必要はありません。でも何日も、何週間も落ち込みが続いているようなら、マタニティーブルーや産後うつの可能性もあります。
これから出産を控えている妊婦さんも、自分が産後うつやマタニティーブルーになるのではないか?という心配があると思います。
今回は、最新の情報から産後うつやマタニティーブルーについてまとめています。少しでも悩んでいるなら、ぜひ一読してみてください。
うつとは?
そもそも「うつ」(うつ病)とはどのような病気なのでしょうか?
厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス」には以下のようにあります。
”一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいなどの身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じている場合、うつ病の可能性があります。”
つまり、「落ち込んでいる」という気分だけでなく、
1、精神症状
2、身体症状
3、日常生活に問題
この3つが揃うと、うつを疑う必要がありそうです。
うつになると脳が正常に働かなくなることもあり、考え方が否定的になってしまいます。そうすると何事も悪い方にばかり考えてしまい、それがまたストレスとなり抜け出すのが難しくなることもあります。
女性に多い
まず大前提として、うつは病気なのだということを知ってください。身体的な怪我や病気と違って、精神的な不調(病気)を伴う「うつ」は自分では判断がつきにくいものです。
しかし100人の内6人がかかる、決して珍しくはない病気です。そして女性は、男性の1.6倍もうつを発症すると言います。女性だけが経験するライフイベントで、心身に大きな負担がかかることが原因の一つです。中でも妊娠や出産、更年期とうつ病の関係性が知られています。
出産後の症状
女性は出産後に、高い割合でうつの症状が起きることがあります。気分が落ち込み、喜んだり楽しんだりすることができなくなるのです。しかしこれだけでは、産後うつだとは断定できません。ここでは、産後の気分の落ち込みのパターンを見てみましょう。
一時的な落ち込み
出産では、想像を絶するほどの身体的・精神的な負荷がかかります。そのため出産直後に疲れたり、不安を持つことはよくあることです。日常生活に支障をきたさない程度なら、それほど問題ではありません。では一時的な落ち込みと、産後うつやマタニティーブルーとの境はどこでしょうか?
精神科のお医者さんは、問診のときに2つの点を確認すると言います。まずひとつ目が、落ち込んだ状態が長く続いているか、という点。ふたつ目が、興味や喜びを失っているか、という点です。
一日中落ち込んだ状態が何週間も続いていて、赤ちゃんの笑顔をかわいいと感じないなどの状態があり、日常生活に支障をきたしている場合は、産後うつを疑いましょう。
マタニティーブルー
産後うつと似たような言葉に、マタニティーブルーという言葉があります。どちらも出産後の抑うつ状態を指す用語ですが、何が違うのでしょうか?
日本産婦人科医会のホームページによると以下のように説明されています。
”マタニティブルーズは、出産後の女性の30-50%が経験します。出産直後は気持ちも高ぶっていますが、産後数日から2週間程度のうちにちょっとした精神症状が出現します。多くは、ふいに涙が止まらなくなったり、いらいらしたり、おちこんだりする症状がでます。”
マタニティーブルーと産後うつの違い
マタニティーブルーは、出産後に半数近くが経験するため、心配することはありません。訳もなく涙が出たり、眠れなくなるなど、うつに似た症状がありますが、多くは産後10日程度で回復します。症状を見ると産後うつのようにも思えますが、違いは症状が出ている期間です。
マタニティーブルーの対処
先出の日本産婦人科医会も
”自然に経過を見るだけで通り過ぎていきますので、雨宿りをするような感覚でやり過ごしてしまいましょう。”
とアドバイスしています。
産後うつ
産後うつの原因は複数の要素が考えられますが、最も大きいと考えられているのがホルモンバランスの乱れです。出産により胎盤が排出されることで、同時に女性ホルモン(エストロゲン)が減ってしまいます。そのことが原因で、感情が不安定になるというメカニズムです。さらに、産後のストレスも産後うつの原因だとされています。 出産により身体に大きなダメージが残っている中で、すぐに赤ちゃんのお世話が始まりますので、この時期は当然ながら不安や焦りに見舞われます。さらに貧血や脳の炎症なども、産後うつに関係しているという意見もあります。
自己判断で産後うつに気づける人は多くないようです。また、これまで心身ともに健康で、うつなんて自分には関係ないと思っている人でも、産後うつになりうるということを認識しておきましょう。
最近は出産後の検診でアンケートに回答したり、カウンセラーさんと話をするなど、産後うつの早期発見が図られています。
産後うつの注意点
産後うつは、症状が進むと気力が低下し、自らSOSを発することもできなくなってしまいます。そのため早めの対応が大事だと言われています。早い段階で産後うつの対処をすれば、軽度で抜け出すことができるのです。軽度の場合、まず育児や家事の負担を減らし休める環境を作ることで、快方に向かうことがほとんどだと言います。
NGワードとして
「母親なんだからしっかりしなさい」
「大変なのはみんな同じ」
などの言葉は、ママを追い込むことになりかねません。
家族や周りの人たちがママの不調を察知して、手を差し伸べることが不可欠です。実際、産婦人科の先生によると、ほかのうつに比べて産後うつは完治しやすいという特徴もあるのだとか。周囲の人の理解も、ママを産後うつから予防し、早期に回復するためには大事なことなのです。
産後うつになったら?
自分が「産後うつかも、、」と思ったら、一人で抱え込まずに周囲の人に相談しましょう。
産院の先生や助産師
産婦人科医は精神科の専門医ではありませんが、産後うつに関して適切なアドバイスをもらえることがあります。同じく産院で担当してくれた助産師さんも、相談しやすいのではないでしょうか。産後うつが気になったら、まず出産した産院に相談してみましょう。
保健師
妊婦面談や新生児訪問などで出会う機会の多い保健師さん。彼らは産後うつの相談には必ず乗ってくれます。
またそれだけでなく、お子さんやママに対する地域の様々なサポート制度を教えてくれることもあります。軽い症状で、病院に行くべきか迷ったときでも、ぜひ気軽に相談してみてください。
その他にも、ママ自身のかかりつけ医や、赤ちゃんがこれから通うことになる小児科でも
相談に乗ってくれるはずです。また、産後のママのケアをしてくれる専門の施設もあります。
それら専門機関への相談が難しければ、ひとまずパパや母親(義母)、ママ友、先輩ママや友人でも構いません。とにかく一人で悩まずに、誰かに打ち明けるようにしましょう。
パパも産後うつになる!?
産後うつはホルモンバランスの乱れが原因の一つだという説明をしました。これはママに限ったことではありません。パパも赤ちゃんが生まれた後はうつのリスクが高まると言われています。
数年前から「イクメン」がもてはやされる風潮がありますが、仕事に子育て・ママのサポートに追われ、睡眠時間も削られがちなこの時期は、パパもついつい頑張りすぎてうつになる人もいるそうです。
パパの産後うつについては、ほとんど日本では認知されておらず、サポート体制も全くと言っていいほど、ありません。
まずは自助努力として、残業を減らしたり、深酒をやめるなど、少しずつ子育ての生活に馴染んでいくようにしましょう。どうしても辛いときは、早めにかかりつけ医や専門医に診てもらうことも選択肢の一つです。
さいごに
いかがでしたか?
今回は産後うつやマタニティーブルーについてまとめてみました。出産・子育ては決して楽しいことばかりではありません。それどころか、思ったようにいかないことばかりです。でも、必ず辛さの何百倍もの楽しさや幸せがたくさん待っています。
産後うつやマタニティーブルーは決して珍しいものではありません。ここで取り上げた情報を参考にしていただいて、ぜひ楽しい子育てライフを送ってください♪
・厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_depressive.html
・日本産婦人科医会
https://www.jaog.or.jp/
・ニューズウィーク日本版特別編集 0歳からの教育【知育編】 理想の子育て [ムック] ニューズウィーク特別編集
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B06XKVW52K